当研究グループは宇宙探査工学講座・宇宙輸送工学研究室としても活動しています。こちらもご確認ください。

宇宙機の大気再突入を主な研究テーマの1つとしています。宇宙機が惑星大気に再突入し空気力によってその速度を減じ、着水着地する過程では様々な現象が現れます。宇宙機を用いたミッションの中でも最もクリティカルな過程の1つは、宇宙機が高い軌道速度を持って惑星大気に再突入すること、空気力で減速させられることによって特徴づけられるものとなります。


Fig. 再突入機の再突入軌道

通信ブラックアウトとその低減化技術
通信ブラックアウトは再突入機との通信を阻害する現象の1つで、その低減化が求められています。当研究グループでは再突入カプセル表面材料の触媒性がカプセル後流の電子密度を減少させる効果に着目し、新しい通信ブラックアウト低減化手法の研究に取り組んでいます。これまで「京」コンピュータを用いた計算科学的アプローチによる数値的実証と、JAXA大型プラズマ風洞を用いた実験的実証を行ってきました。


表面触媒効果による電子数密度低減(上:触媒なし、下:触媒あり)

高速流体・柔軟構造体の連成問題
柔軟構造再突入機は、軽くて柔らかい膜面を利用して効率的に再突入を行う新しい技術です。しかし、その柔らかさから空気力によって大きく形状変形することもあります。このとき流体と構造の複雑な連成問題が生じるため、再突入時の空力加熱環境や空気力を適切に評価する必要があります。ここでは、効率的な連成解析モデルの構築を行い、柔軟構造再突入機やパラフォイルといった柔らかい膜面による飛行体などの連成問題に取り組んでいます。

膜面変形あり(柔軟構造モデル)   膜面変形なし(剛体モデル)
柔軟構造再突入機の衝撃波と空気力による形状変形

はやぶさ型再突入カプセルの空力安定問題
はやぶさ型再突入カプセルは、今や小惑星 探査に限らず将来の様々なサンプルリターンミッション(彗星、火星衛星)において使用が検討されています。しかし、はやぶさカプセルは遷音速域において空力不安定性を持つことが知られています。この現象を大規模計算資源と計算科学的手法によって調べ、その低減化を探っていくことも行っています。

遷音速域におけるはやぶさ型カプセル近傍の流れ場(速度勾配テンソル第2不変量)


高速流体・高温気体力学グループでは、再突入時に宇宙機に現れる一連の問題に対して研究を実施しています。「京」コンピュータなどの大規模計算資源による計算科学的アプローチや、JAXAなどの風洞を利用した実験参加も積極的に行っています。これらを通して、再突入機に現れる高速流体の定量的理解、宇宙工学への展開を目指しています。JAXAや様々な大学との共同研究を行い、宇宙機設計開発や宇宙機を用いた科学・工学ミッションへの貢献を実施しています。
質問などあれば以下にお問い合わせください。
高橋裕介、ytakahashi☆eng.hokudai.ac.jp(☆を@に変えてください)


最近の発表論文(学術誌投稿論文)
高エンタルピー流ソルバーRG-FaSTAR

  •  Yusuke Takahashi, “Advanced validation of CFD-FDTD combined method using highly applicable solver for reentry blackout prediction”, Journal of Physics D: Applied Physics, Institute of Physics, Vol.49, No. 1, 2016, 015201 (15pp). DOI: 10.1088/0022-3727/49/1/015201.

はやぶさ型再突入カプセルの空力加熱

  • Yusuke Takahashi and Kazuhiko Yamada, “Aerodynamic Heating Analysis of Sample Return Capsule in Future Trojan Asteroid Exploration”, Journal of Thermophysics and Heat Transfer, American Institute of Aeronautics and Astronautics, Vol. 32, No. 3, July 2018, pp. 547-559. DOI: 10.2514/1.T4837.

柔軟構造飛翔体の空力・空力加熱

  • Yusuke Takahashi, Taiki Koike, Nobuyuki Oshima, Kazuhiko Yamada,“Aerothermodynamic Analysis for Deformed Membrane of Inflatable Aeroshell in Orbital Reentry Mission”, Aerospace Science and Technology, Vol.92, p 858-868, September 2019. DOI: https://doi.org/10.1016/j.ast.2019.06.047
  • Tatsushi Ohashi, Yusuke Takahashi, Hiroshi Terashima, and Nobuyuki Oshima, “Aerodynamic instability of flare-type membrane inflatable vehicle in suborbital reentry demonstration”, Journal of Fluid Science and Technology, The Japan Society of Mechanical Engineers, Vol. 13, No. 3. 2018, JFST0020-JFST0020. DOI: 10.1299/jfst.2018jfst0020.

通信ブラックアウト予測

  • Yusuke Takahashi, Reo Nakasato, and Nobuyuki Oshima, “Analysis of Radio Frequency Blackout for a Blunt-Body Capsule in Atmospheric Reentry Missions”, Aerospace, Vol. 3, No. 1, 2, 2016. DOI: 10.3390/aerospace3010002.
  • Yusuke Takahashi, Kazuhiko Yamada and Takashi Abe, “Examination of Radio Frequency Blackout for an Inflatable Vehicle during Atmospheric Reentry”, Journal of Spacecraft and Rockets, American Institute of Aeronautics and Astronautics, Vol. 51, No. 2, March 2014, pp. 430-441. DOI: 10.2514/1.A32539.